2025/05/15 13:05
盛夏でも “造り手の息づかい” をそのまま届けるために

五月半ば、気温が 25 ℃を越えるころ。
配送トラックの荷室はぐんぐん熱を溜め込み、昼下がりには車内温度が 45 ℃、ときに 50 ℃を超えることもあります。熱に繊細な自然派ワインは、このわずかな時間で果実の輪郭がぼやけ、香りの立ち上がりが鈍り、最悪の場合にはコルクが膨張して液漏れを起こす――そんな危険と隣り合わせ。
「畑で生まれたニュアンスを、グラスの中で再現してほしい」
その一心で、モンソムは 5 月15 日から 9 月末まで、すべての出荷をクール便に切り替えました。造り手の努力を無駄にせず、受け取った瞬間に“心がときめく香り”を開かせるための、私たちのこだわりです。
1|なぜモンソムはクール便を「必須」にしたのか
熱に弱いワイン
自然派ワインは生命力に満ちる一方、熱による酸化や揮発酸の生成が早いという弱点を抱えます。35 ℃を超える環境で 1 時間置くだけでも、色調は褐変へ傾き、アロマは平板になりがち。熱劣化は、造り手が畑で 365 日費やした努力を一瞬で奪い去るのです。
配送車内は“モバイルサウナ”
真夏、荷室の温度は 40 ℃台が常態。JAF の実験では 30 分で 45 ℃、1 時間で 50 ℃を突破した例もあります。もし常温便で輸送すれば、ボトルは浅い湯煎をされたも同然――「ワインが煮える」という表現が誇張でないことを、確認しました。
安心を数値化するポリシー
クール便追加料金:全国一律 440 円(税込)。
対象期間:5 / 15 – 9 / 30(気温次第で延長)。
追加コストをいただく代わりに、ワインの物語を損なわないという価値をお届けします。

2|“飲み頃温度”はワインの輪郭を決める
ワインは温度で姿を変える生きもの。冷えすぎれば香りが閉じ、上がりすぎれば酸が緩む。下のチャートは、モンソムが試飲によって導き出した「自然派の最適レンジ」です。
スタイル / 推奨温度 / 感じられる表情
スパークリング / 6–8 ℃ / きめ細かな泡、ピュアなミネラルが立つ
軽白・ロゼ / 8–12 ℃ / 柑橘やハーブ、塩味のアクセント
オレンジ/ガメイなどライト赤 /
12–14 ℃ / 赤果実とみずみずしい酸のベストバランス
クラシック赤・熟成タイプ / 15–18 ℃ / タンニンがほぐれ、スパイスと土のニュアンス
TIP|家庭での温度調整
抜栓前:白・泡は冷蔵庫から出しそのまま。赤はセラーの温度か、冷蔵庫保存の場合はボトル外側がほんのり冷たい程度まで 30 分ほど室温に。
冷やしすぎたら:ボトルを 10 分ほど室温放置。白ワインはワインクーラーに氷水ではなく、水のみで温度をキープすることもできます。
前編のまとめ
輸送はクール便で“畑の状態”を守る。
飲むときは温度でワインを活かす――たったこれだけで、自然派のポテンシャルは何倍にも膨らみます。
次回(後編)は、
▸ グラス形状が決める香りの立体感
▸ 還元香をやさしくほぐすデキャンタージュ
▸ 開栓後 72 時間、味わいを保つ冷蔵テク
を詳しく解説。モンソムの“味を守る哲学”を、ぜひ最後までお楽しみください。